メディカルアフェアーズ情報
メディカルアフェアーズの最新情報を更新していきます。
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コラム
患者サポートプログラム 事例紹介2~医療機関とのコミュニケーションサポート~
コラム2023.06.16 (Fri)2023.06.16 (Fri)患者サポートプログラム 事例紹介2~医療機関とのコミュニケーションサポート~
今回は副作用の症状を自覚しながら受診時に医師に報告を躊躇うBさんの事例です。半年前に○○癌と診断され、大学病院に通院しています。診断後すぐに治療が開始されました。幸い、早期発見のため薬物療法から開始することとなり、患者サポートプログラム(PSP)対象の薬剤が処方されたため医療機関からプログラムを紹介されすぐに登録となりました。 PSP看護師が、定期的に状況を伺うお電話を行い、注意して欲しい症状(△△)について毎回話をしておりました。△△が出てきた場合や少しでも症状が悪化していると感じた際にはすぐに医療機関に電話し、指示を仰ぐように依頼していましたので、△△について注意すべきとの自覚がありました。(個人差はありますが、△△は早期に対応すれば薬剤を中止せず減量等で継続できます。) あるコール時にいつものように様子を伺うと、前日から△△らしきものがあると話をされました。担当のPSP看護師が様子を聞き、医療機関に電話して指示を仰ぐように伝えたところ「この症状を伝えたら薬剤中止になるのでしょうか?」とのコメントがありました。話を伺うと、せっかく薬剤の効果も見られてきたため、中止したくない。治療を開始して日常生活への影響もほとんどなく、注意すべき症状は我慢できるから報告しない方が良いと思っているとのこと。更に、他剤に変更となると、対応できる薬剤が減っていく可能性も考え、なるべく長い期間同じ薬剤で頑張りたいとの意向がある状況でした。気持ちはよくわかります。数字的な効果も表れ、前回の受診時には医師から「効果が確認できますね。○○さんに合っているみたいなので、このまま続けましょう。」と言われていたら、多少辛くてもこのまま続けるのが一番良い!と考えてしまうのですね。 看護師は添付文書上も“適宜減量”の記載もあり必ずしも中止になるとは限らないこと、早期に対応することが一番重要であることを伝え、医療機関への報告と今後の指示を仰ぐよう依頼しました。加えて、Bさんが薬剤を継続したいと思っていることを伝えても全く問題ないことと、医師はBさんの意向も踏まえ、他の検査値等の状況を加味して指示することになると考えられることを伝えました。その後、Bさんは医療機関に電話し、受診日変更と受診日までの薬剤の指示がなされました。薬剤は減量して継続となり、△△の症状改善の薬も処方され、△△はほぼ改善された状況となりました。 この件の後も看護師からの定期コールは続いており、薬の効果を実感しながら前向きに治療を継続している様子を確認しています。薬剤中止になった場合にはPSPのサービス提供も基本的に中止となりますが、そのような場合でも的確な治療を医師が選んでいること、薬が合致するか確認する期間が必要とされることもあること、患者さんの意思を医師に伝えることはとても重要であることを伝え、その後の治療も前向きに受けていただけるような会話で終了する形を心がけております。 患者さんの意思を医師に伝えながら治療できるようにサポートする事例紹介でしたが、いかがでしたでしょうか? 当社PSPメンバーでも、いざ自分が患者となり受診すると、あれを伝えればよかったとか、これを聞いてみればよかったと振り返ることあるよね、と話をすることもあります。同じような経験をしたことがある方は多いと思います。そのような時にPSPを活用いただけると感じております。 クライアントの方の意向で、一人の患者さんに対し、無期限(プログラム自体が終了するまで)でフォローするケースや一定期間のフォローとなるケースなど様々です。いずれの場合にも弊社ではインバウンドコールはいつでも(含:一定期間終了後)引き受ける形のプログラムで運営しております。患者さん/ご家族に対し、同じ看護師が継続して対応することで、ちょっとしたことを確認する時にも連絡しやすい環境を整えております。ご興味ある方はお気軽にお問い合わせください。 お問い合わせ -
コラム
内勤のメディカルアフェアーズの役割
コラム2023.05.12 (Fri)2023.05.12 (Fri)内勤のメディカルアフェアーズの役割
製薬企業によってMAの形態は様々あり、組織名や役割の区分が異なりますが、主に内勤のMAは、MAプラン構築・管理業務、研究者主導型研究の管理やMAが主導あるいは共同研究となる市販後臨床研究等の遂行・管理の実施などを担う業務、HCPや患者さんあるいはMR等からの問い合わせに対して医学的・科学的観点での回答を行う業務、MA内の人材育成や活動の評価分析を行う業務があり、この他にもMA資材の作成や製薬企業として外部に発信する各種販売促進資材のサイエンティフィックレビュー業務など、多様な業務があります。これらが業務ごとに組織化され、遂行されている企業もあれば、外勤となるMSLやメディカルエデュケーション(MedEd)活動も含め、複数の業務を個人で担当する組織体制になっている企業もあります。これは、それぞれの企業の状況によって異なり、分業を進めることに対するメリット・デメリットを考えながら体制構築を進めていく必要があります。これら各業務の詳細や、担当者に求められる資質については、別の機会のコラムで触れていきたいと思います。 -
コラム
MSLの職種としての将来性
コラム2023.03.17 (Fri)2023.03.17 (Fri)MSLの職種としての将来性
国内では2010年ごろから、製薬企業のメディカルアフェアーズ部の中にMSLが本格的に組織されはじめ、当社の試算では2023年3月現在までに約2300人のMSLが国内で活動していると思われます。 日本製薬工業協会においても、2019年4月1日付で「メディカルアフェアーズの活動に関する基本的考え方」が、2022年7月には「メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)の目指すべき方向性」がリリースされました。 このようにMSLの業務は業界でもかなり注目されてきており、今後も人数や役割が拡大していくようにもみえます。 一方で、製薬企業がカバーする疾患領域は、プライマリーケアからスペシャリティケアに移行してきており、多くの医療従事者を対象とするのではなく、少数の専門医が対象となってくるでしょう。MSLについては、さらに、その中でもThought Leaderが対象となってくるのでMSLの絶対数は今後も大きく増えていくようなことはないと考えています。 今回はコラムですので、あくまでも個人的な考えとなりますが、下記のような傾向になってくると思っています。 MSLの絶対数はそれほど増えていかない MSLの役割は拡大していく MSLの質が大きく問われるようになっていく この中でも特に3.が重要なのではないかと思います。 当社では多くのメディカルアフェアーズ部に対するコンサルティングを行ってきましたので、その経験から申し上げますと、MSLの方が持っている資格や経験に対するrequirementは今後も益々高まってくると思われます。つまり、医療系資格(医師、薬剤師、看護師の有資格者)を持ち、大学院(修士以上、博士号を持っていればなお良い)修了者、さらには、製薬企業でのメディカルアフェアーズや関連部門での経験、ある領域での専門性や経験、コミュニケーション力、ビジネス的な洞察力、英語力(特にビジネス英語)が備わっている人が理想となります。 メディカルアフェアーズが組織され始めた際には、博士号を持っていることが重要とのことでしたが、現在では、それだけでは不足しており、ビジネスマンとしての質の高さやバランス感覚が求められているといっても良いでしょう。したがって、現在の自分に満足することなく、常に前向きに勉強をしていく姿勢が重要です。その勉強も会社から提供される研修だけではなく、自ら各種学校やセミナーへ足を運んだり、大学院などで勉強をしていくことが必要でしょう。 また、個人的にかなり気がかりなのは、疾患の専門性ですね。これに関しては、いくつも専門性を持つことは実際には不可能ですので、せいぜい一つか二つになるかと思います。その専門性が所属する製薬企業で永続的に必要とはされることはまずないでしょう。製薬企業の持つパイプラインで自分の得意とする領域の製品がなければ、転職という道を選ばなくてはならないこともあるかと思います。そのため、「安定」を強く望む方には厳しい世界になるかもしれません。一方で、常に勉強をし続け、サバイバルで生き抜くことへのやりがいを感じている方であればこんなに楽しいことはないかもしれませんね。 少し無責任な言い方に聞こえるかもしれませんが、私はこのメディカルアフェアーズという仕事は非常に魅力的だと思っています。Patient Centricityを前面に掲げながら、アンメットニーズの解決に挑む、大変素晴らしい仕事だと思います。 当社ではメディカルアフェアーズを体系的に学ぶことのできる「MAアカデミー」を運営しております。製薬企業で勤務されている方に限らず、異業種、大学生、大学院生など、もし、ご興味のある方はぜひとも当社にお問合せいただければと思います。 お問い合わせ -
コラム
患者サポートプログラム 事例紹介1~緊急時のお問い合わせ~
コラム2023.02.21 (Tue)2023.02.21 (Tue)患者サポートプログラム 事例紹介1~緊急時のお問い合わせ~
最初の紹介は発作で死に至る可能性のある希少疾患に罹患しているAさんの事例です。約2年前に診断され、大学病院に通院しています。診断までに数年かかりましたが、診断後は定期的に通院し、担当医師との関係は良好です。患者サポートプログラム(PSP)は、先生から紹介されたのでとりあえず登録してみたという状況であり、特に質問したい内容や具体的なサポ―ト依頼はありませんでした。 定期的な電話連絡を通じ、日常生活のことなどを伺いながら適宜情報提供を行っておりました。ところが、ある予約日に連絡がとれず、担当看護師が後日お話を伺ったところ、予約日に緊急受診をしていたとのことでした。詳しく伺うと、希少疾患を診てもらうために通院している大学病院は自宅から遠いため、近くの病院に緊急受診をしていたのですが、その病院ではAさんが罹患している希少疾患についてどのように対応したらよいのかわからず、疾患の治療薬もなかったためにそのまま様子をみるだけの状況だったとのことでした。幸いなことに、様子をみるだけで症状は落ち着き、数時間後にご自宅に帰られたそうです。この経験から、次回以降、緊急時には大学病院まで行かなければならない、と不安に感じていると仰っていました。担当看護師から、これまで大学病院の担当の先生と緊急時対応について話し合いを行ったことがあるのか伺ったところ、話し合ったことがないとのことだったため、次回受診時に確認することを促しました。患者さん自身、緊急時には大学病院に行くべきであり、対応について担当医に相談すべきではないと思っていた様子がありました。その後、患者さんより、受診時に確認でき、近くの病院でも緊急時に対応できるよう対策がされたとのお話がありました。その際の患者さんとの会話から、担当看護師は、患者さんが担当医に質問できたことで治療に対する主体性が向上した様子があると感じています。 ここまでお読みいただきありがとうございます。「えっ、それだけ?」「緊急時の対策ができただけじゃないか?」と思われた方も多いのではないでしょうか?緊急時の確認と聞くと当たり前のように感じると思いますが、緊急時の確認はあくまで一例であり、些細なことでも確認ができていないこと、担当医に聞くことを躊躇していることが意外にあることがわかってきました。そのような中で、病院に勤務していた看護師から、「先生に聞いてみたらどうでしょうか?」「先生に確認した方がいいですよ」と言った一言で患者さんが前に進めたケースは多くあります。希少疾患であれば、この疾患を診てくれる先生は多くないから、先生に嫌がられないか、といったことを気にされる方もいらっしゃいます。希少疾患でなくとも、先生に聞いたら嫌がられないかと躊躇して聞かないことで、結果としてずっと不安を抱えた状況になります。PSPを通じて、そっと患者さんの背中を押すことで、治療に対する主体性を高めることができると感じています。 次回は、患者さんへの疾患・薬剤の情報提供を行った事例紹介を行う予定です。 当社PSPに関してご相談やご質問等ございましたら、いつでもお気軽にご相談くださいませ。 お問い合わせ -
コラム
MA/MSLのソフトスキル教育はどのように企画すれば良いの?
コラム2023.02.09 (Thu)2023.02.09 (Thu)MA/MSLのソフトスキル教育はどのように企画すれば良いの?
製薬協 医薬品評価委員会MA部会「メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)の目指すべき方向性」ⅰ)によりますと、「ソフトスキル」とは「コミュニケーション力や協調性、自発性、リーダーシップなど、 目に見えない定性的なスキル」とされています。 私自身がヒアリングした製薬企業の中では、例えば「リーダーシップ」という教育の切り口だけでも、様々なニーズがありました。「MSLのリーダーシップとは、社会規範を遵守するだけでなく、自らの倫理観も明確にして行動できること」という企業もあれば、「MSLのリーダーシップとは、チームの中にいるメンバー一人ひとりが個性を発揮すること」という企業もありました。ソフトスキルの研修そのものに「正解がない」からこそ、各社で実情に照らして深く考え、どのように研修プログラムとして実現できるかについて試行錯誤している様子が垣間見えました。 そのような中で、以下の三つの点について留意しておくと、ソフトスキルの研修企画が一歩ずつ前進するのではないかと考えています。 -
コラム
MA/MSLの教育体系の現状
コラム2023.01.25 (Wed)2023.01.25 (Wed)MA/MSLの教育体系の現状
製薬業界に携わる前、複数の業界と関わった中での経験ではありますが、製薬業界におけるMA/MSL部門の教育体系は、目指す姿が共通認識され、まさにこれから企画・整備に向かっている段階ではないかと受け止めています。これまで接点を持った製薬企業数社では、専門的な知識やスキルに関する研修を取り入れたいとのお話しをいただき、いち早く、MA/MSLの機能を確立したいとの想いが強く伝わりました。 そのような中で、専門的な知識のインプットやスキル習得と共に、気づきや感性を体験から養うソフトスキルの教育プログラムを取り入れようとのお声がけは現時点でまだ少なく、これから徐々にお聞きするのではないかと推察しています。 例えば、自分や相手について考え方や感情面まで深く理解できるような「コミュニケーション」を体験的に学ぶ教育プログラム。自らの価値観とスキルに強い確信が持て、どのような志を大事にするかの「自発性」マインドを育てる教育プログラム。そして、プロジェクト管理のためのマネジメントだけでなく、状況に応じて人間同士が力を合わせると大きな成果を狙えるグループダイナミズムも体感できる「リーダーシップやマネジメント」のプログラムなど。一言で言えば継続的に人間力を育てるプログラムを取り入れたいとのお話はまだ少ない傾向にあります。 大前提となるビジョンや戦略、事業計画、そして現実的に起きている問題から切り離さずに教育プログラムは計画立案する事が望まれます。そのため、やはり専門的な知識やスキルの習得は優先せねばならないかもしれません。しかしながら、周知の通り、我々が生きているビジネスの世界はなかなか計画通りには進まず、常に軌道修正しなければ成功が難しくなっています。だからこそ、相手や状況に対する鋭い感受性や、速やかな意思決定ができる揺るがぬ価値基準、目標達成のために共感して巻き込む力、新しさを具現化する力など、ソフトスキルもきっと必要になることでしょう。 教育を通して目に見える効果を求める一方で、組織・部門が永続するために人間形成の部分も企業内教育の範囲としてどれだけ捉えられるのか、私自身、専門性と人間性の教育の両面で皆さまのお役に立ちたいと考えています。 当社の教育・研修に関してご相談やご質問等ございましたら、いつでもお気軽にご相談くださいませ。 お問い合わせ -
コラム
Patient Centricityとは何なのか?
コラム2023.01.13 (Fri)2023.01.13 (Fri)Patient Centricityとは何なのか?
まず、製薬業界全体が、Patient Centricityを掲げるようになった背景について考察したいと思います。色々なところで言われることですが、近年、医薬品の開発パイプラインが変化していますⅰ)。かつては、生活習慣病のような、患者が多数存在する疾患に対して、新たな医薬品が次々と開発されていました。当時、一人一人の患者の声を聴くよりも、処方権を持つ医師から「感触」や「使い勝手」を聴取することが、重視されてきたことは否定できないでしょう。確かに、そちらの方が効率は良いでしょうし、実際に、それによって多大な利益を得てきました。しかし現在では、このようなやり方だけでは思うような利益を得られなくなった、というのはよく耳にするところです。 それと同時に、最近は、より希少な疾患に焦点を当てた医薬品開発が活発になっています。希少疾患の場合、患者数は少ないですが、その分、治療薬の薬価が高い傾向にあります。そのような環境では、患者一人のことを深く知ることが、今まで以上に価値をもつという側面があります。 患者と医師の関係性の変化も、影響を与えていると考えられます。近年、古典的なパターナリズムを目にする機会は減り、患者が自分の治療について意見を述べ、意思を決定していく場面が増えています(もちろん、十分できているとは言えないかもしれません)ⅱ)。そのような環境では、患者が疾患や治療に対して、適切に理解をすることが不可欠です。医療・科学の不確実性を伝えつつ、正確な医療情報を理解しやすい形で提供することが、より一層求められます。 -
コラム
Creating Shared Value(CSV)とは
コラム2022.12.22 (Thu)2022.12.22 (Thu)Creating Shared Value(CSV)とは
近年、製薬企業はPatient Centricityを掲げ、患者中心の活動を行うということを業界全体としても明言しています。この流れは、アメリカマーケティング協会によるMarketing 1.0のProduct-drivenからMarketing 2.0のcustomer-orientedを経てMarketing 3.0のHuman-centricに移行したⅰ)ことと考え方が近く、企業の考え方がこのように変化してくるのは自然のことであると考えても良いかもしれません。