2023.08.22 (Tue)

MSLにおける面談の「型」について

当社は、「MSLと医師の科学的な意見交換の方法」について数多く研修してきましたが、やはりMSLの面談には、ある種の「型」があることがわかります。チームの新設・組み替えが非常にダイナミックな製薬業界において、この「型」の存在を理解することは、経験の浅いメンバーをすぐに機能させるために役立つと考えます。今回は、MSLの面談における「型」について述べようと思います。

ダイナミックなMSLチームの組替え

当社は、「MSLと医師の科学的な意見交換の方法」についてトレーニングを提供しています。特にそのニーズが高いのは、新設されたばかりのMSLチームです。製薬業界では、自社医薬品のライフサイクルに合わせて、メディカルアフェアーズおよびMSLチームの新設・組替えがダイナミックに行われます。昨今は、営業部門の縮小と並行して、営業部門からのMSLの供給が増えるという現象も生じています。そのような中、MSLマネージャーは、急場でチームを作ることが迫られます。現状、MR出身のMSLが割合として最も多いと思われますが、他に開発(CRA含む)や研究職(アカデミア含む)も加わって、MSLチームが構成されることになります。チームを早く機能させるために、多様なキャリアを持つメンバーのマインドセットや目線を合わせることが急務となります。そのような中、自社でMSLに特化した研修を実施するリソースや経験が少ない場合や、外部の視点が必要な場合に、当社に依頼が来ることになります。

MSLの出身と特徴

当社が提供している医師との面談を想定したロールプレイにおいても、それぞれのキャリアに応じた特徴が見られます。MR出身のMSLは、面談の「型」がしっかりしており、それが叩き込まれている印象です。面談の導入から本題に入るところがスムーズです。また、資材・論文を正確によどみなく話すことに長けています。その一方、「丁寧すぎる」ところ、話題が「処方」に行きがちなところは感じてしまいます。開発出身のMSLは、面談スキルこそ目立たないものの、やはり臨床試験・臨床研究、薬事周辺の知識が豊富です。単にスタディの結果だけでなく、その周辺の議論をできるのは強みでしょう。研究職・アカデミア出身の方は、もちろん個人差はありつつも、面談そのものに慣れていない方が一定数おられます。限られた時間の中で、相手のことを考えながら面談全体をどうコントロールし、面談の目的を達成するかというところは経験が浅いと感じます。その一方、サイエンスの「面白さ」を知っているのが研究職の方です。単なる情報交換ではない、踏み込んだ面白い議論につなげられるのは研究職出身者の強みでしょう。

MSLの面談における「型」とは?

MSLの面談には、いわゆる「営業トーク」とは異なる「型」が存在しています。ここでは詳細は述べませんが、色々な製薬企業のMSLを見ていくと共通点に気づきます。異なるキャリアからMSLになるとき、通常、1~2年かけて、MSLとしての面談の「型」を身に着けていくようです。MR出身のMSLだと、同時に、「処方の提案」や「使っていただく」という営業のスタイルを取っ払わなければならず、そこに苦労される方もいらっしゃいます。

MSLの経験が5~6年ほど経ってくると、今度は、その「型」を破るようになります。まさしく、守破離の「破」です。MSL面談において、最も重要なものは何かという優先順位をつけ、限られた時間を有効活用しようという姿勢になります。科学的に中立な姿勢は崩さないものの、必ずしも順番に詳細に説明することにこだわらないようです。

それでは、MSLの面談における「離」とは何か?聴くところでは、伝説的なMSLが少数ながら存在するようです。どんな医師も満足する面談ができる、どんな医師とも良好なパートナーシップが構築できるMSLです。それについては私たちも情報が不足しておりますので、引き続き情報収集を続けたいと考えています。


当社の研修やMSLロールプレイアセスメントに関してご相談やご質問等ございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

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ライター

越田 隆介
シミック・イニジオ株式会社 メディカルアフェアーズカンパニー メディカルソリューション部 マネージャー
越田 隆介
医師、医学博士。専門領域は糖尿病。大学教員を経て、当社に入社。製薬企業のメディカル部門でMSLおよびパブリケーション業務を経験。現在、患者と協働しながら、営利企業による”Patient-Centricity”を実践している。そのほか、医師との科学的議論に関する方法論や、臨床研究関連法規に関する解説など、製薬企業社員向けに研修コンテンツを提供している。
医師、医学博士。専門領域は糖尿病。大学教員を経て、当社に入社。製薬企業のメディカル部門でMSLおよびパブリケーション業務を経験。現在、患者と協働しながら、営利企業による”Patient-Centricity”を実践している。そのほか、医師との科学的議論に関する方法論や、臨床研究関連法規に関する解説など、製薬企業社員向けに研修コンテンツを提供している。