2023.07.07 (Fri)

患者団体との協働について

ヘルスケア関連企業によるPatient Centricity活動の1つとして、「患者団体との協働」あります。今回は、当社が実施している患者団体との協働についてご紹介します。

活動紹介

2023年1月23日のコラム「Patient Centricityとは何なのか?」でも述べました通り、製薬企業をはじめとした多くのヘルスケア関連企業が、Patient Centricityという言葉を掲げていますが、その活動の1つとして、患者団体との協働があります。当社としても、企業と患者代表が医療上の問題について議論し、共に解決に向けた取り組みをすることは、望ましい社会の在り方だと考えます。その一方で、両者の関係が不健全なものにならないよう、利益相反には常に気を配らなければなりません。例えば製薬企業の場合、日本製薬工業協会(製薬協)が、「患者団体との協働に関するガイドライン」1を出しています。当社は製薬企業でございませんが、上記のガイドラインを参考にして活動しています。あくまで患者の利益を重視し、公正な立場で関わっております。

最近の活動をご紹介しますと、全国膠原病友の会様と共同で医療講演会を実施しました(2023年5月11日「正しく学ぼう!膠原病の最新治療」2)。この講演を実施するにあたり、理事の方と定期的に会議を開きましたし、企画にあたっては会員の方から意見も募りました。講演会のコンセプトについては当該団体の意思を尊重し、私たちは会を進行する上で必要な助言をするにとどめました。当社は医薬品等を製造販売しているわけではありませんので、利益相反が生じず、お互い公正な立場でやり取りができたと感じています。

患者への情報提供の重要性

今回の活動で、患者への情報提供の重要性を認識する場面が多くありました。膠原病(関節リウマチ・全身性エリテマトーデスなど多数の疾患群)の領域では、最近、治療が目覚ましい発展を遂げています。かつてはステロイドによる治療が中心であり、それが長く続いていました。もちろん、ステロイドの抗炎症作用は確かなものですが、副作用で苦しむ患者が多かったのも事実です。近年、そこに免疫抑制剤や分子標的療法が加わり、それらをうまく使いこなすことができれば、有効性と安全性の双方において、大きな改善が認められるようになりました。

しかし、次々と新しい治療が出てくる状況なので、最新の情報を入手し、適切に理解するには大変な努力を要します。専門の医師であっても、自身の知識をアップデートし続けるのは簡単ではないでしょう。残念なことに、膠原病の領域では、専門性を持った医師が偏在していると言われています。現実として、当人にとってベストでない治療が続けられている例もあるようです。患者も自ら学び、医師と治療について話し合うことができれば、患者にとって利益につながるはずです。当社は引き続き、公正な立場から、最新情報をアクセスしやすくかつ理解しやすい形で、提供していきたいと考えています。

協働の重要性と難しさ

患者の方々が実際にどのような問題に直面しているのか。やはり、当事者から話を聴かなければ、その実態は見えてきません。日頃から多くの相談を受けている患者団体から、その情報を共有いただけるのは、大変貴重なことです。一方で、実際にアウトプットを出す段階では、大きな葛藤に直面いたします。それは、当事者のニーズは、多彩であるということです。たとえ質の良い(と自分たちは思っている)ものを提供しても、皆が欲しがるわけではありません。ニーズを細分化して捉え、それを充足しようと思うと、対象者が減ってしまいます。一方、大きな集団に分け隔てなくと考えると、その中身が薄くなりがちです。量と質のトレードオフは常に難しい問題でありますが、やはり自分たちで軸をもって、活動することが重要なのだろうと考えます。

1. 日本製薬工業協会:患者団体との協働に関するガイドライン(2022年改定)
2. 全国膠原病友の会ウェブサイト:https://kougentomo.xsrv.jp/

ライター

越田 隆介
シミック・イニジオ株式会社 メディカルアフェアーズカンパニー メディカルソリューション部 マネージャー
越田 隆介
医師、医学博士。専門領域は糖尿病。大学教員を経て、当社に入社。製薬企業のメディカル部門でMSLおよびパブリケーション業務を経験。現在、患者と協働しながら、営利企業による”Patient-Centricity”を実践している。そのほか、医師との科学的議論に関する方法論や、臨床研究関連法規に関する解説など、製薬企業社員向けに研修コンテンツを提供している。
医師、医学博士。専門領域は糖尿病。大学教員を経て、当社に入社。製薬企業のメディカル部門でMSLおよびパブリケーション業務を経験。現在、患者と協働しながら、営利企業による”Patient-Centricity”を実践している。そのほか、医師との科学的議論に関する方法論や、臨床研究関連法規に関する解説など、製薬企業社員向けに研修コンテンツを提供している。