2022.10.03 (Mon)

そもそもメディカルアフェアーズって何だ?

メディカルアフェアーズの目的や役割については、当該ホームページの「メディカルアフェアーズとは」に記載いたしましたので、ここではもう少し踏み込んだ話をしてみたいと思います。

 

製薬企業では、メディカルアフェアーズ部門はマーケティングや営業部などのコマーシャル部門とは切り離されているところがほとんどだと思います。そのため、マーケティング戦略とメディカルアフェアーズの戦略は別々に作られることも多いとは思いますが、実はメディカル戦略はマーケティング戦略の一部なのです。

 

一般の消費財やサービスを提供している企業からすれば、これらを切り離して戦略が立案されていることに違和感を持つかもしれません。

 

では、なぜ製薬企業は二つの戦略を分けているのでしょうか?

製薬企業は生命関連性が非常に高い製品を研究開発・製造・販売しているため、製品を「売る」ということを第一の目的に掲げる部門と、実際にヒトを対象とした臨床研究を行う部門とは明確に分ける必要性があったのです。逆に申し上げますと、両者を分けていないと別ページで述べたような事件が起こってしまうかもしれません。

 

メディカル戦略は、顧客である医師や患者のアンメットメディカルニーズを捉え、その解決に向けて活動を行うことによって製品自体の価値を高めることを目的とした部門です。一方、マーケティング部門は、製品が市場に出て「売れるしくみ」を考える部門です。

 

ここで一つ誰もが疑問に思うことがあります。

企業は利益を得ることを目的としているにも関わらず、なぜ、製薬企業はメディカルアフェアーズ部門のような一見売上獲得とは関係なさそうな組織に多くのリソースをかけているのでしょうか?

 

両者は目的が異なるように見えますが、実はそれほど遠くないものと思います。マーケティング部門は短期的~長期的に製品を売るための戦略を立てます。営業部門は、立案されたマーケティング戦略に基づいて比較的短期的な視点で売上獲得に主眼をおきます。メディカルアフェアーズ部門は、製品の価値を高めるために顧客(医師や患者)のニーズを取得してその解決策に取り組みます。その解決策のほとんどは臨床研究によって行われます。これら臨床研究によって得られた結果は論文などで公表されますが、その結果を日本あるいは世界中に発信します。その発信の役割を担うのがマーケティング部門や営業部門ということになります。

 

つまり、コマーシャル部門とメディカル部門は直接の役割は異なりますが互いに連携しているのです。互いの戦略は別々に立案されますが、メディカルアフェアーズで立案された戦略は実はマーケティング部としっかりとコンセンサスを得て進められています。

 

このように、メディカルアフェアーズ部門は、顧客のニーズを把握して臨床研究を行うという一連の流れを担うため、短期的にすぐに結果を出せる部門ではありません。したがって、戦略的には中長期的な売上獲得を目的とした部門であると解釈することもできるでしょう。

 

以前、多くの製薬企業がメディカルアフェアーズ部門を立ち上げた頃は、コマーシャル部門とメディカルアフェアーズ部門の仲があまりよくないということをよく耳にしました。その理由は、互いに見ている視点(ターゲットとしている期間)が異なるために、互いの意見がかみ合わないようなことがあったからなのだと思います。

 

製品価値を高める活動が、なぜ企業に必要なのかの理由については、CSV(Creating Shared Value)のコラムで詳しく書きたいと思います。

 

ライター

田中 弘之
シミック・イニジオ株式会社 執行役員  メディカルアフェアーズカンパニー カンパニー長
田中 弘之
製薬企業にて、創薬研究、マーケティング、メディカルアフェアーズ部門を経験後、当社においてメディカルアフェアーズ事業を設立。 製薬企業メディカルアフェアーズ部に対し、コンサルティングを中心とした包括的サービスを提供している。 これまで、20社を超える製薬企業にコンサルティングを実施した実績を持つ。 メディカル戦略プランの立案、コンピテンシー理論を用いた育成プラン立案、インサイトを活用した効果的な戦略立案、Patient Journey理論、MSLエンゲージメントプラン立案などを得意とする。
製薬企業にて、創薬研究、マーケティング、メディカルアフェアーズ部門を経験後、当社においてメディカルアフェアーズ事業を設立。 製薬企業メディカルアフェアーズ部に対し、コンサルティングを中心とした包括的サービスを提供している。 これまで、20社を超える製薬企業にコンサルティングを実施した実績を持つ。 メディカル戦略プランの立案、コンピテンシー理論を用いた育成プラン立案、インサイトを活用した効果的な戦略立案、Patient Journey理論、MSLエンゲージメントプラン立案などを得意とする。