Patient Journeyを描く際のTips
皆さん、こんにちは!
皆さんの所属している部署によっては、Patient Journeyを描くことがある方もいらっしゃるかと思います。特に、製薬企業のメディカルアフェーズ部門やマーケティング部門に所属している方でしょうか。また、最近では医療従事者の方もその機会があるかもしれません。
今回は、Patient Journeyを描く際に役立つTipsについて話をしたいと思います。
患者さんのEmotionを定量的に捉えた研究
つい先日、私は、「Emotional journey of patients with specified intractable diseases in Japan」という論文を発表しました。2024年3月1日現在は、速報でインフォーメーションされています。(リンク)
この論文は、難病の患者さんを対象に確定診断遅延に関わるアンメットニーズを探るために、患者さんのEmotion(感情)の状態を明らかにし、かつ、それを定量的に示したものです。感情の状態が最も低くなるところにこそ患者さんのアンメットニーズが存在している可能性が高いことを私は常に提唱してきましたが、この研究はその一つの例となります。
また、当該研究は、限られた数の患者さんへのインタビューではなく、比較的多くの患者さんを対象としたアンケート調査によって、「感情の状態」を捉えた研究です。
患者さんの感情の状態が低くなるところにアンメットニーズが潜んでいる!?
私はこれまで、クライアントである製薬企業のメディカルアフェアーズ部門に対して、メディカル戦略プラン立案に関わるコンサルティングを提供してきました。そこで幾度となく経験してきたのですが、患者さんの感情の状態を捉えることは、患者さんのQOLを改善するためのヒントであり、メディカル戦略プラン作成時の極めて重要な情報の一つとなるのです。
だからこそメディカル戦略の立案には、Patient Journeyを描くことが重要であり、それが最初のステップになります。一般的には、実際に患者さんにインタビューをして各タッチポイントの感情の状態について話していただき、それを記入していきます。また、患者さんご自身の体調変化などにも応じて記入されていきます。
できるだけバイアスを排除したい
患者さんに直接、感情の状態を尋ねているのだから、その信憑性は高いはず(?)と先入観を持ってしまいます。しかしながら、患者さんには直接会場にご足労いただきますし、時間がかかるインタビューですので、対象となる患者さんは限られます。また、お体のご負担も心配ですので可能なインタビューの人数や時間は限られてくるでしょう。その点で、限られた数のインタビュー調査だけではバイアスがかかる場合もあり注意が必要です。
私は以前、ある製薬企業とコンサルティング会議をしていたときに、戦略担当の方が「あること」をコメントされました。「この患者さんの感情の状態を最後まで定量的に示せないのはなんだか気持ち悪いなあ」というものでした。私は、「今の作成のステージは、初期仮説立案の段階なのでまずはそれで構いません」とお伝えしました。
患者さんの感情の状態を定量的に示す方法は?
一方で、私は、その言葉を言われて「ハッ」とさせられました。(確かにその通りかもしれないと。。。)Patient Journey作成には、(仮説立案→仮説検証→仮説修正→仮説検証→仮説修正→仮説検証)というように、仮説検証を繰り返します。仮説検証が終わった段階では定量的に数字で示したいということも良く理解できます。
上記論文は、ある程度、完成度の高いPatient Journey用いることを前提に、インタビューではなくウェブによるアンケート調査によって患者さんの感情の状態を捉えたものになっています。結果として、感情の状態を定量化できましたし、その数値が低くなるところに、患者さんのインサイトが存在し、それを特定することができました。
皆様の担当領域にもよりますが、仮説検証のタイミングで患者さんの感情の状態を定量的に示すことも可能ではないかと思います。個人的な研究の話ですが、より効率的に患者さんのアンメットニーズをとらえることができるよう、ほかの疾患においても検討を重ねていきたいと思います。
メディカル戦略プランの立案やPatient Journeyの作成について、詳しく知りたい方は、お気軽に弊社までお問い合わせください。