MSL(メディカルサイエンスリエゾン)の役割とその活動の重要性とは
今回は、MSLの役割について書きたいと思います。
私たちは、MAアカデミーというメディカルアフェアーズに特化した教育プログラムを提供しております。そのプログラムの第一回のメディカルアフェアーズ(MA)概論の講義において、「MSLはMA部の中で具体的にどのような役割をしているのか?」という質問を受けることがあります。
その回答としては、大きく分けて下記の3つになります。
- MA戦略プランの立案においてはThought Leader(TL)のファクト・インサイトが必要となる。そのファクト・インサイトを収集し、戦略立案チームに情報をフィードバックする
- MA戦略プランで決定されたアクティビティを実施する
- 当該疾患領域における医科学的情報を収集する
メディカル戦略プランとは、MA部門が活動するためのいわば計画書であり、MAはこの戦略にしたがって活動しています。メディカル戦略プランは自社が同定したアンメットメディカルニーズ(UMN)の解決策が書かれ、具体的にどのような活動が実施されるのかが記載されています。「いつ、何を、どこで、だれが」ということが細かく記載されます。UMNは、顧客(医師及び患者)からのファクトやインサイト情報をもとに同定されます。これらファクトやインサイトをMSLが現場から収集するのです。
「では、MSLの業務は誰でもできそうですね?」ということを言う人がいますが、そんなに簡単ではありません。ファクトは事実に基づく情報ですので誰もが入手できる情報かもしれませんが、インサイトについては簡単にはいきません。インサイトとは人がなんとなく感じていることだけれどもうまく言葉にできないことを指します。下の図に示したように実は本音よりもさらに深い部分に存在するのです。このインサイトを収集するためには一筋縄ではいきません。MSLは当該疾患領域のオーソリティであるTLと直接話をしながらインサイトを収集しますが「話をしながら・・・」とは何も世間話ではありません。TLと疾患や様々なエビデンスの話題を中心に話をします。その中でインサイトを収集することになります。したがって、MSLは医科学的な知識や考え方を持っているだけでなく、非常に高いコミュニケーションスキル、人間関係構築力が必要とされるのです。
少し話を前に戻しますが、MA戦略プランはMSLが入手したファクトやインサイトをもとに立案されるわけですので、MA戦略プランの質は戦略担当者はもちろんですが、MSLが持ってきた情報に大きく左右されます。別の見方をすれば、MA戦略プランはMA部の活動の計画書でありながら、その戦略はMSL自身が決めているとも解釈できるのです。
このようにMSLがいかに重要な任務を担っているかがお分かりいただけたのではないかと思います。これからMSLを目指そうとされている方の参考になればと思います。