2022.10.03 (Mon)

MSLはリモートで成り立つ?

2020年からの新型コロナウイルス感染症の拡大により、MSLによる医師とのリモート面談は急速に増加しました。当初はリモート面談に慣れていなかったり、システムの整備がなされていなかったことなどもあり、導入に否定的な医師もみられました。しかしながら現在では学会や会議などにも積極的に活用されたことで、多くの医師がリモート面談を実施するようになりました。

 

MSLとしてもアポイント取得時に移動時間を考慮する必要がなく、移動の労力と経費がかからないため、非常に簡便で有用な面談ツールと言えます。医師の許容度やニーズが高まったことからも、現在ではリモート面談は医師とのコミュニケーションの中心的な役割を担っています。

 

一方で、リモート面談にはいくつか注意が必要な点もあります。

一点目は、相手の表情や雰囲気が画面越しでは読み取りにくい点です。対面の面談ですと、その表情や素振りから医師の気づきや熱意を感じ取ることができますし、怪訝な表情から懸念を読み取ることもできます。しかしリモート面談では画面上でこれらの些細な変化をキャッチできないことがあり、結果として深いインサイトの収集の機会を逃してしまうことがあります。

 

二点目は、医師の面談環境が把握しにくいことです。MSLの医師との面談は担当疾患や担当製品についてのサイエンティフィックなディスカッションが中心であり、場合によっては未承認薬剤の情報や適応外処方に関する情報に至ることがあります。このような情報は医師から質問があった場合にのみ提供することになり、当然ながら不特定多数の医師に提供すべき情報ではありません。リモート面談は対面の面談とは異なり、医師がいる画面の向こう側の環境を正確に把握することや調整することのハードルが高くなります。仮に医師側が個室ではなく大部屋にいる場合にはディスカッションの内容が他の医師に聞こえてしまう可能性もありますし、他社の社員に聞こえてしまう可能性も否定できません。このような状況は製薬企業のメディカル活動において大きなリスクになり得るので細心の注意が必要です。

 

とは言え、医師がMSLとの面談の意義やルールを理解しており、適正な環境下であればリモート面談は大変有用なツールとなることは間違いありませんので、今後も積極的に活用されると考えられます。

ライター

西岡 知行
シミック・イニジオ株式会社  メディカルアフェアーズカンパニー フィールドソリューション部 部長
西岡 知行
大学卒業後、MRとして10数年、大学病院・基幹病院を中心に担当したのち、MSLにキャリアチェンジ。 外資系・内資系の複数の製薬企業において免疫領域および感染症領域のMSLとして従事。 現在は製薬企業の委託を受け、MSLのコーチング、トレーニング、アセスメント業務とフィールドメディカル活動のコンサルティング業務も担当。
大学卒業後、MRとして10数年、大学病院・基幹病院を中心に担当したのち、MSLにキャリアチェンジ。 外資系・内資系の複数の製薬企業において免疫領域および感染症領域のMSLとして従事。 現在は製薬企業の委託を受け、MSLのコーチング、トレーニング、アセスメント業務とフィールドメディカル活動のコンサルティング業務も担当。