2023.02.09 (Thu)

MA/MSLのソフトスキル教育はどのように企画すれば良いの?

MSLの体系的な研修制度を整備する過程で、「ソフトスキル」が推奨プログラムとして挙げられています。重要であることは分かりながらも、一般的な実務スキルとは異なる「ソフトスキル教育」とは、一体どのようにして企画・検討していけば良いのでしょうか?
今回はこの点に触れてみたいと思います。

ソフトスキルとは

製薬協 医薬品評価委員会MA部会「メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)の目指すべき方向性」ⅰ)によりますと、「ソフトスキル」とは「コミュニケーション力や協調性、自発性、リーダーシップなど、 目に見えない定性的なスキル」とされています。

 

私自身がヒアリングした製薬企業の中では、例えば「リーダーシップ」という教育の切り口だけでも、様々なニーズがありました。「MSLのリーダーシップとは、社会規範を遵守するだけでなく、自らの倫理観も明確にして行動できること」という企業もあれば、「MSLのリーダーシップとは、チームの中にいるメンバー一人ひとりが個性を発揮すること」という企業もありました。ソフトスキルの研修そのものに「正解がない」からこそ、各社で実情に照らして深く考え、どのように研修プログラムとして実現できるかについて試行錯誤している様子が垣間見えました。

 

そのような中で、以下の三つの点について留意しておくと、ソフトスキルの研修企画が一歩ずつ前進するのではないかと考えています。

MA/MSLのソフトスキルを研修企画する際の、最低限のポイント

①「トレーニング」と「実践」を対にする

教育担当者の方であれば「当たり前」だと言われそうですが、やはり「研修は研修」「実務は実務」と別個に捉えて研修企画をしてしまうと、現実的な行動発揮に結びつきにくくなります。特にソフトスキルの研修は、コミュニケーション・リーダーシップ・プレゼンテーション・戦略思考など、研修テーマだけでは抽象度は固いため、「医師との面談ロールプレイ研修」のように、研修企画段階から、「どのような行動発揮を目的にするのか」を描くことは必要であるものと思われます。

 

②「技の習得」と「観の内省」を同期化する

ある企業で「MSLロールプレイ研修」を開催した後日、オブザーバーの方々への研修報告会の一コマで以下のようなことを共有したケースがあります。「ロールプレイで面談スキルが上達することは大切である。しかしながら、面談も人間同士の遣り取りだからこそ、“自分の意見を最後まで聞いてもらえたという感謝の気持ち”や、“相手の話を最後まで聞き切ったという体験”、“相手を最後まで支えたいという優しさ”などが実感できないとテクニックが先行してしまう。人間的な魅力も育てなければならない」とのことでした。MA/MSLに倫理観や道徳観、中立的な姿勢が求められるからこそ、ソフトスキルの研修企画では知識やテクニックを理解・習得するだけではなく、自分自身の中に芽生えた気づきや感情を整理・共有する時間や、働く仲間同士に対してフィードバックやアドバイスする時間も検討できるかが重要であるものと思われます。

 

③ 生み出したい学習効果に応じて、OFF-JTのパターンは変える

近年、研修の開催方法は集合型や通信型だけでなく、オンライン・e-learningなど幅広くなったと言えます。しかしながら、そもそも自社独自で研修を企画した方が良いか(インハウス)、或いは、異なるビジネスパーソン同士が参加する研修を活用した方が良いか(他流試合)という企画方法については、生み出したい学習効果が異なります。特にソフトスキルの研修は、「思考力・行動力を養う」ことを研修ゴールとして設定しているケースが多いため、より自社のリアルな実情について深く理解・議論し、現実的な問題解決行動を促進したい場合はインハウス形式が望ましいです。また、固定観念を打破して新たな発想に磨きをかけたい場合は、他流試合形式が望ましいです。得たい学習効果に向けて最も望ましい企画方法を選択しましょう。

 

いかがだったでしょうか。上記以外にも、大前提となるコンピテンシーモデルの有無も重要ポイントになりますが、まずは最低限上記の三つについて、今後、ソフトスキルの研修を計画・企画する際の一助にして頂ければ幸いです。

 


 

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お問い合わせ

ⅰ)日本製薬工業協会 医薬品評価委員会MA部会「メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)の目指すべき方向性」2022年7月

ライター

馬場英博
シミック・アッシュフィールド株式会社  メディカルアフェアーズ事業部門 コンサルティング部 マネージャー
馬場英博
鉄鋼・自動車関連・家電関連・ソフト開発・不動産・食品・製薬など、複数業界に対する組織開発コンサルタントとして、戦略推進ファシリテーター・教育体系構築プロジェクトリーダー・研修講師・キャリアカウンセラー・組織風土調査インタビュアーなどを経験。その後、SDGs推進企業の教育部門新規立上げを経て、シミック・アッシュフィールドMA事業部門へ入社。特に、教育制度の整備や、ソフトスキルをベースとした各種導入・継続教育を担当。
鉄鋼・自動車関連・家電関連・ソフト開発・不動産・食品・製薬など、複数業界に対する組織開発コンサルタントとして、戦略推進ファシリテーター・教育体系構築プロジェクトリーダー・研修講師・キャリアカウンセラー・組織風土調査インタビュアーなどを経験。その後、SDGs推進企業の教育部門新規立上げを経て、シミック・アッシュフィールドMA事業部門へ入社。特に、教育制度の整備や、ソフトスキルをベースとした各種導入・継続教育を担当。