2023.05.12 (Fri)

内勤のメディカルアフェアーズの役割

メディカルアフェアーズ(以下、MA)は、企業内の医学的・科学的知識の中核として、製品の市販前後の広い範囲で活躍をする組織です。MAが担う役割は、主にエビデンスの構築とその情報発信となります。これらを達成するためには様々な方法があり、MAの業務も多様なものとなります。そこで重要なのがMAプランです。患者さんに最適な医療を届けるためのMA活動が何なのか明確にし、日々の活動の拠り所になるものがMAプランとなります。今回は、このMAプラン構築・管理を担う担当者の役割とその他、内勤のMA業務について紹介していきます。

内勤のMA業務

製薬企業によってMAの形態は様々あり、組織名や役割の区分が異なりますが、主に内勤のMAは、MAプラン構築・管理業務、研究者主導型研究の管理やMAが主導あるいは共同研究となる市販後臨床研究等の遂行・管理の実施などを担う業務、HCPや患者さんあるいはMR等からの問い合わせに対して医学的・科学的観点での回答を行う業務、MA内の人材育成や活動の評価分析を行う業務があり、この他にもMA資材の作成や製薬企業として外部に発信する各種販売促進資材のサイエンティフィックレビュー業務など、多様な業務があります。これらが業務ごとに組織化され、遂行されている企業もあれば、外勤となるMSLやメディカルエデュケーション(MedEd)活動も含め、複数の業務を個人で担当する組織体制になっている企業もあります。これは、それぞれの企業の状況によって異なり、分業を進めることに対するメリット・デメリットを考えながら体制構築を進めていく必要があります。これら各業務の詳細や、担当者に求められる資質については、別の機会のコラムで触れていきたいと思います。

内勤のMA業務に必要な能力

他部門と同様に様々な役割を担う内勤のMA業務ですが、共通することとして、それぞれに高い医学的・科学的知識が必要となります。製薬企業が発信する情報には、根拠となるエビデンスの提示が必要不可欠であり、そのエビデンスは、当該企業が行った治験や市販後の臨床研究のほか、公的な評価資料や学術論文などになります。こういった情報を正確に理解し、常に最新の情報をキャッチアップすることが、すべてのMAメンバーに求められます。

また、MAは企業内の医学的・科学的知識の中核として、他部門からの相談や対応を依頼されることも多くあります。こういった役割を担うためには、研究開発や自社営業戦略など、幅広い情報を理解しておく必要があります。さらには、コミュニケーション力やネゴシエーション力といったスキルも重要となってきます。企業内の状況を理解しつつ、同時にMAとしてやるべき、臨床現場におけるアンメットメディカルニーズの解決に向けた活動を如何に効率的に行っていくかを考えることをMAメンバーは求められます。多くの場合、MAプランの構築・管理を行う人が担うことが多いようです。

この他、外資系企業や内資系においても昨今のグローバル化によって、海外の部門や企業との連携が多くなっており、英語による会議や交渉が頻繁に行われることから英語によるコミュニケーションスキルも重要となります。

MAメンバーのMAプラン構築への関わり

MAプランの構築は、企業によって様々な方法があるようです。詳細は今後のコラムで紹介しますので割愛しますが、患者さんや臨床現場にあるアンメットメディカルニーズを解決するためのMAプランになっていることが重要となります。このためMAプランの担当者は、MSLやMedEdあるいはコールセンターやMIなど、様々なチャネルから社外の情報を収集し、時には自身もKOLとの面談やアドバイザリーボード等を通じて情報を収集・検証しMAプランの構築を行います。

さらにMAプラン担当者は、営業部門からの独立性を担保しつつ、社内関連部門やMA内の他部署と連携を図りながら、MAプランを構築していくことになりますが、その構築プロセスにMAの他部署を積極的に巻き込んでいくことは、構築後のMAプランを円滑かつ効率よく実施していく上で重要になるでしょう。また、MAプラン担当者以外のMAメンバーもMAプラン構築のプロセスを知ることで、日々の業務にMAプランに基づいたMA活動を意識することが出来るとともに、MAプランの高質化のために必要となる情報収集や分析など、明確な目的を持ったMA活動を展開することにも繋がり、より質の高い業務遂行が行えます。

最後に

MA業務は、社内外に対して多様な方法で展開されており、今回はその中で内勤のMA活動について紹介しました。MA活動は、患者さんあるいは臨床現場のアンメットメディカルニーズを解決するためのMAプランに基づいたものとなります。高質なMAプラン構築には、外勤のMAメンバーだけではなく、内勤のMAメンバーの役割も非常に重要となります。また、多様性の受容も非常に重要で、様々なアイディア創出によって効率的なアンメットメディカルニーズの解決に繋がることもあることから、多くの方にMAで活躍をしてもらいたいと思います。MAメンバーとして求められる能力はありますが、是非、多くの方に興味を持ってもらえると嬉しいです。

ライター

藤田 亮介
シミック・イニジオ株式会社  メディカルアフェアーズカンパニー メディカルソリューション部 部長
藤田 亮介
製薬企業のメディカルアフェアーズ部門にて、疾患領域におけるメディカル戦略の策定及びKOL面談を含むメディカル活動に従事した。その後、メディカルアフェアーズ部門全体の業務戦略や海外を含めたメディカル戦略策定の基盤づくりを行った。 当社入社後は、ヘルスケア企業に対し、コンサルティングや研修などを包括的サービスを提供している。 特に、メディカル戦略策定のサポート、メディカルアフェアーズ組織の立ち上げ、各種導入・継続研修の提供、SOP/WIの策定、資材レビュー、ガイドラインへの対応などを担当。
製薬企業のメディカルアフェアーズ部門にて、疾患領域におけるメディカル戦略の策定及びKOL面談を含むメディカル活動に従事した。その後、メディカルアフェアーズ部門全体の業務戦略や海外を含めたメディカル戦略策定の基盤づくりを行った。 当社入社後は、ヘルスケア企業に対し、コンサルティングや研修などを包括的サービスを提供している。 特に、メディカル戦略策定のサポート、メディカルアフェアーズ組織の立ち上げ、各種導入・継続研修の提供、SOP/WIの策定、資材レビュー、ガイドラインへの対応などを担当。